アレキサンダーファン
2014年02月掲載
プロフィール
豊田実加(とよだ・みか) 豊田実加
(とよだ・みか)

1989年生まれ。千葉県出身。習志野市立習志野高校、東京藝術大学卒業。同大学モーニングコンサート、第82回読売新人演奏会、JTアフタヌーンコンサートに出演。第1回日本ホルンコンクール第3位。サイトウ・キネン『若い人のための室内楽勉強会』参加。第80回日本音楽コンクール入選。ホルンを丸山勉、守山光三、西條貴人、日高剛の各氏に、室内楽を稲川榮一、守山光三、河村幹子の各氏に師事。2013年11月より神奈川フィルハーモニー管弦楽団首席奏者。Cor Ensemble VENUSメンバー。

使用楽器:
 アレキサンダー 103MBL
使用マウスピース:
 ティルツ T4

第39回 プレーヤーズ
豊田実加 インタビュー

国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。



─2013年11月から正式に神奈川フィルハーモニー管弦楽団(神奈川フィル)の首席ホルン奏者に就任されましたね。おめでとうございます。

 ありがとうございます。でもまだ慣れないです(笑)。神奈川フィル全体でも、「平成生まれのメンバーは初めて」と言われました。1か月後に1つ下の子が入ることが決まっていますが。


─ホルン歴はどのくらいですか。

 中学校の吹奏楽部で始めたので、10年ちょっとです。


─最初はなぜホルンを吹こうと思ったのですか。

 小学生のときに金管バンドでコルネットを吹いていて、中学校では私が入った年に吹奏楽部ができました。ホルンもマウスピースの大きさが近かったので「どちらでもいいです」と言っていたら、先生に「イメージ的に豊田さんはホルンかな」と言われて、そのままホルンを吹くことになりました。


─その先生の判断は正しかったわけですね。

 そうですね。私にとっては恩師と言えます。吹奏楽部は私たちが初めての学年で先輩はほとんどいなかったのですが、学校に来ていた楽器屋さんがたまたまホルンを専門でやられていた方で、よく教えていただきました。先生も素晴らしい方で、2年目にはB部門(小編成部門)の最上位大会である東日本大会まで連れて行ってくれて、部員もどんどん増えて3年目にはA部門(大編成部門)に出ました。

豊田実加

 


─吹奏楽部としては第一期生ということで、大変だったことも多かったのではないですか。

 でもあそこで、苦労が報われたときの喜びを学んだがために、高校も「吹奏楽で全国大会を目指したい」と思って習志野市立習志野高校を選び、2年生のときにめでたく全国大会に行くことができました。高校時代は本当に吹奏楽一筋でしたね。年間に本番が60回以上あって、1年のうち部活が休みの日が1週間あるかないか、という感じでした。


─よく燃え尽きませんでしたね。

 そうなってもおかしくなかったですけれども、高校に入るときに「音大を目指します」と顧問の先生にも、丸山(勉)先生にも言って部活に入っていますので、もう戻れないですよね(笑)。


─丸山さんとはそれ以前から?

 中学2年生のときに、つの笛集団のサマーキャンプに行ったんです。当時、ホルンのことを何も知らなくて、プロの音も聴いたことがありませんでした。いろいろ調べていたらたまたまつの笛集団のことを知って、定期演奏会を聴きに行き、サマーキャンプのチラシを見て「行ってみようか」と。当然参加者の中では最年少で、今でも先生方には"中二"って呼ばれてます(笑)。それがきっかけになり、後に紹介していただいて丸山先生にレッスンを受けることになりました。


─吹奏楽部の練習もかなりのものなのに、それに加えてレッスンのための練習もしなければならないのは、かなり大変だったのでは?

 でも、私は野放しにされると練習しないタイプだと思うので、ああいうふうに楽器に触れていなければならない環境にいた方が良かったと思います。放課後は部活があるので、自分の練習は主に昼休みとか、放課後の練習後などにしていました。


─高校時代の思い出として、どんなことが記憶に残っていますか。

 もちろん楽しい思い出はたくさんありますが、2年生のときに初めて全国大会で普門館のステージに立って、プレッシャーの中で人前で吹く怖さをその時に初めて思い知りました。コンクールメンバー決めがオーディション制だったので勝手に名前を背負ったような気になったんでしょうね。先輩方に対しても「しっかりやらなければ申し訳ない」と思って、うまく吹けなくなった時期がありました。


─その不調から抜け出せたきっかけは何か?

 今思うと、守りに入ったために調子を崩してしまったんだと思います。でも「守っていてもしょうがないんだよなあ」ということを、初めて勉強しました。「音を外さないように」とか「失敗しないように」とかいうことが裏目に出ていたので、攻めた方が結局後悔しないんだなと。


─具体的に「攻める」というのは?

 緊張すると息が浅くなるので、とりあえず息を吸おうとか、いろいろ考えて迷うよりは思い切って息を入れてみようとか。プレッシャーで何もわからなくなってしまったときには、何かひとつでも普段通りのことを考えようとしていました。それが難しいのですが。

─でもそれを乗り越えて、東京藝大にもめでたく受かったのですね。

 先輩たちや同級生たち、周りがみんなすごく上手という環境は、良いですね。人の良いところを見つけて、自分もできるようになりたいなと思ったりとか。たくさん練習する先輩を見て、「自分もしないとヤバイ」と思ったりとか。

豊田実加

 




「その明るさは絶対なくしてはだめだよ」

─大学ではどなたに習ったのですか。

 守山(光三)先生が教授で、西條(貴人)先生と日高(剛)先生も非常勤でいらしたので、3人の先生にお世話になりました。


─だいぶタイプの違う先生方に、同時に習うことになりましたね。

 そうですね。でも、どの先生のレッスンも私にはなくてもならないものでした。レッスンのやり方とか言い方など本当に三者三様でしたので、そのときどきで自分に最も合うやり方を見つけられたり、その方法を試してみたりして、世界が広がったのがよかったです。同じことを教えてくださったとしてもアプローチのしかたが違うので、「このことは○○先生に言われたことがわかりやすかったな」と思ってそれができるようになったときに、「あの時△△先生はこのことが言いたかったんだな」と納得できたりとか。


─具体的には?

 例えばアタックのことひとつでも、西條先生のレッスンでは「息が浮いたり沈んだりしないように、とにかく息をまっすぐ出しなさい」と基本的なことを繰り返しました。日高先生は体の内部のことまで全部説明してくれましたが、「頭では理解できても実践するのが難しいな」と思うことも、すごくわかりやすくて効果がありました。守山先生はピンポイントで「今あなたの舌はこうなってるから、こうするといい」というように細かく教えてくださる。私としては全部のことをトータルして、納得してできるようになるという。


─先生に言われたことで、特に記憶に残っているようなことはありますか。

 さっきもお話したように周りがみんな上手で、私は自信がない。でも、「何かしら良いところがあるからここにいるんだろうな」と思っていたときに、「その明るさは絶対なくしてはだめだよ」と言っていただけたことです。音楽のこと、音のこと、私自身のことすべてに関してだと思いますが、それが私にとってかなりプラスになったと思います。


─それは、最初のお話にもあった「守りに入ってはいけない」ということと共通するような気もします。

 そうですね。コンクールなども毎年受けていたのですが、どうしても気持ちが下向きになってしまうことがあるじゃないですか。そうするとやはり良い結果につながりませんね。自分ではあまり考え込むタイプだとは思っていませんでしたが、後々考えると、「あのときは調子が悪かったな」という時期はあります。


─それはどうやって脱したのですか。

 最初に調子を崩したのが大学1年の後半から2年の前半までくらいです。そのとき守山先生はわかっていたのだと思いますが、レッスンもデュエットなど一緒に吹いてくださった時期があって、そのおかげで少しずつ立て直せたのかもしれません。その後夏にコンクールがあったので、それに向かってがーっと練習したら調子が戻ったように思います。守山先生には「調子が悪い」という話はしませんでしたが、何でもわかる方ですから。もう霊能力を持っているんじゃないかというくらい、楽器以外のことでも何でもわかってしまうんです。怖いですよ(笑)。


─しかし、結局は練習に熱中することが一番なんですね。

 またうまい具合に、大学時代には毎年コンクールがあったんです。1年生のときが日本音楽コンクール、2年生のときが日本管打楽器コンクール、3年生のときは第1回日本ホルンコンクール、4年生のときが日本音楽コンクールです。決して「コンクールに通るために」ということではないのですが、やはりコンクールに向けた課題がたくさんあり、それぞれの曲も仕上げていかなければなりませんから、練習にも熱が入りました。


豊田実加



別に賞が欲しいわけでもないし、守るものもないので、自分がやれるだけやるしかない

─豊田さん的に、曲を仕上げていくコツなどはありますか。

 あまり好きじゃない曲でも、まず好きになることからですね。個人的に、無伴奏の現代的な曲はあまり好きではないのと、低い音が苦手なので、低い音がたくさん出てくる曲は嫌です(笑)。


─低い音はともかく(笑)、現代的な曲を好きになるには?

 とりあえず音にしてみることですね。まずはちょっとした、好きになれそうなフレーズを見つけることから始まり、あとは練習していくにつれて情が湧いて来ます。もし音源があれば、できるだけいろいろな音源を聴くようにします。


─コンクールの曲に限らないのですが、これまでよくCDなどを聴いていたホルン奏者はいますか。

 大学時代にヴラトコヴィッチのマスタークラスを受けたことがあるのですが、その印象が強烈で、その時期はずっと彼のR.シュトラウスのコンチェルトのCDをずっと聴いていた記憶があります。あと、試験の曲などは、近い先輩の演奏の録音を聴いて「いろいろ盗みたいな」と思っていました。「真似する」というよりは「取り入れたい」という感じで。


─ところで、コンクールなど本番に強い方ですか?

 いいえ! でも不思議なことに、そのときによるんです。練習量に比例するわけでもなく。その理屈を、誰か本当に教えて欲しいです(笑)。


─自分の手応えと結果は一致していますか?

 うーん。私は今まで「完璧」と思える演奏は一度もないんです。「ここまでできれば自分の実力だな」という演奏はあったにしても。でも自分なりに満足できる演奏を挙げるとしたら、4年生のとき(2011年、第80回)の日本音楽コンクールの2次で、1曲目でコケまくったんです(笑)。「これ、終わったわ」と吹っ切れたみたいで、3曲目の自由選択のロッシーニ《前奏曲、主題と変奏》では「好きなように演ろう」と思ったのが結果的に良かったみたいです。あのときは、自分で「プチッ」と切れるのがわかりました(笑)。でも、あの前の何か月かは必死に練習しました。別に賞が欲しいわけでもないし、守るものもないので、自分がやれるだけやるしかない、それだけでしたね。


─やはり、練習はやれるだけやった上で、本番では悩まないで吹きたいように吹くというのが理想なのでしょうね。

 そうですよね。できたらいいですよね。でもいっぱい邪念が入るんですよ。「ここは外したくない」と思った瞬間外れるし(笑)。


インタビューはヤマハミュージックリテイリング横浜店にて行なわれた

インタビューはヤマハミュージックリテイリング横浜店にて行なわれた




自分が変わって行くのについて来てくれる楽器だと思います

─さて、神奈川フィルで吹くようになって、プロのオーケストラはいかがですか。

 最初のうちは本番のステージに立って、ホルンを吹くことが怖かったです。でもふと考えてみたら、お客さんは別に、失敗するか成功するかを見に来ているわけではないんだ、と。自分は音楽を与える側なのだから、そういう自覚を持って一生懸命取り組んでいれば少しは楽にできるのかなと、思い始めているところです。楽団員の皆さんが暖かいオーケストラなので、それには本当に助けられています。それがなかったら、今私はここでやってられないと思います。


─神奈川フィルの首席になったばかりですが、他にやりたいと思っていることはありますか。

 いろいろなことに挑戦して行きたいとは思っていますが、まずは今のオーケストラのことをしっかりとやっていきたいです。あと、漠然と思っているのは、私は子どもが好きなので、小さい子たちに音楽を聴かせられる機会があったら良いなと思っています。


─ホルンアンサンブル《ヴィーナス》の活動もありますね。

 ヴィーナスは、ホルン以外の部分でも憧れる女性の先輩方なので、とても楽しくやっています。ただ、皆さん忙しくて、練習のスケジュールを合わせるのが大変です。


─ところで、楽器は今はアレキサンダー103MBLですが、その前は?

 ヤマハのYHR-88IIDを大学1年生まで吹いていました。大学に入ったときにほとんどの先輩がアレキサンダーを使っていましたので影響もされましたし、もとからアレキサンダーの音は好きだったので、「新しい楽器にしよう」と思ったときに103を選びました。最初はコントロールが難しい部分もありましたけれど、それほど問題なく替えられました。

豊田実加

 


─103のどんなところが良いと思いますか。

 何より、この明るい音が好きです。あと、自分が変わって行くのについて来てくれる楽器だと思います。自分が上達した分、より吹きこなせるようになるんですね。


─神奈川フィルのホルンセクションは、アレキサンダーが多いですよね。

 今は、大橋(晃一)さんがクルスペを吹いている以外は、みなさんアレキサンダーです。私自身、他の楽器に目移りしたことがなくて、もっと軽かったり、よく息が通る楽器も他にありますが、アレキサンダーくらいの抵抗感が私は好きですね。パワーがある方ではないので軽い楽器を持ってみるのもいいのかもしれませんが、明るく暖かみのある音色が好きなので、今はアレキサンダー以外は考えていません。


─お使いのマウスピースは?

 ティルツのT4です。これは、高校に入る頃からずっと同じマウスピースを使っています。同じ型番のものを買っても、結局元のものに戻してしまって。


─楽器もマウスピースも、浮気しないタイプなんですね。

 マウスピースを替えてもぱっと吹けるようになってみたいです(笑)。でも、結局は「上手く行かない原因は自分じゃん」と思ってしまうんですよ。


豊田実加



「趣味」のコーナー

─確か犬を飼っていらっしゃるとか。

 白いミニチュアシュナウザーで、世界で一番可愛いと思います! 本当に真っ白で、見た目はホワイトテリアみたいな顔をしています。


─芸などしますか?

 お手とか、一通りします。「バーン!」てやると死んだふりもしてくれるし。本当に可愛いんですよ!


─それ以外では?

 韓国が好きです! K-POPも食べ物も、旅行するのも好きです。年に2回くらいは行っています。


─韓国でお勧めの店はありますか。

 明洞(ミョンドン)にあるタッカルビの店は毎回行きます。買い物なら梨大(イデ)という、大学が近くにあって若い人たちが買い物をする通りに行きますね。あと、東大門(トンデムン)には夜10時にオープンして朝まで営業しているデパートのようなところがあるので、夜中にそこで買い物をして、そのあとサウナに行って帰るとかしてます。


─K-POPでは?

 少女時代です。可愛いですよね。K-POPのライブに行くのが私の楽しみなんです!


─ところで、仕事がない日はホルンは吹きます?

 大きな本番の後のお休みとかだと、1日吹かないで身体を休めます。でも2日以上まるまる吹かないことはないです。私はわりとすぐに吹けなくなるタイプなので、それが怖くて。


岸上 穣



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