アレキサンダーファン
2005年12月掲載
プロフィール
阿部雅人 阿部 雅人
福島県出身。東京芸術大学音楽学部卒業。在学中に東京フィルハーモニー交響楽団に入団。
ホルンを永沢康彦、大野良雄、守山光三、千葉馨の各氏に、室内楽を山本正治、中川良平の各氏に師事。
東京文化会館推薦音楽会出演。96年に福岡、97年に福島でリサイタルを開く。
現在、新日本フィルハーモニー交響楽団団員。東京ホルンクラブメンバー、東京ミュージック&メディアアーツ尚美講師、日本ホルン協会事務局長。
アレキサンダーホルンアンサンブルジャパンメンバー。
第02回 達人の息吹


はい、皆さんこんにちは。お元気ですか?12月ですね。また今年も第九の季節になってきました。

なぜ年末に第九を演奏するようになったのかというと諸説ありますが、経済状態の厳しいオーケストラにとって第九はけっこういいお金になったらしく、日本の音楽環境は、今も昔も変わってないのですね。ま、どちらにしてもかなりの数の演奏会が年末にかけてあるわけですが、ホルン吹きにとってこの第九ってのはなかなかやっかいな曲でして‥‥演奏した方はご存知でしょうが、あのなんでも無い(とお客には聴こえる)音階が鬼門な訳ですねえ。

Beethovenの曲には、一見簡単なようで、演奏すると難しいという譜面が多いのです。第九も、実際にはあの音階の前に、実に3オクターブに渡っての跳躍が要求されており、音階にたどり着いたときには、もうこの世の終わりかという気持ちになり、心臓は勝手に足が生えて歩いて自分から出て行くんじゃないかとさえ思え、音階吹いてる時には、顔面蒼白、頭真っ白状態で、嗚呼、もう思い出すのも嫌‥‥‥‥と、まあこれに近い状態で演奏しています(という時もあった、かな?)。

で、今回はどこにマウスピースをセットするか、というお話。
実はこれが思ったよりやっかいなのです。どこでも良いから好きな所に当てて吹いてください、とはいきません。

さっきの第九でもそうでしたが、ホルンは4オクターブという広い音域を吹かねばなりません。簡単に言えばその4オクターブをピアノからフォルテまでまんべんなく出せるポジションなら良い訳です。さらに言えば音色が良いことに越したことはありません。

以前より上唇と下唇の割合は約2:1と言われていますが、私なりに注意点を挙げてみたいと思います。

まず、下唇より上唇を多く使っていること。これは、上唇を振動させるという意味で大事ですし、ホルンらしい音を出すためにも必要です。ただ、唇の割合はよく言われますが、僕は歯のどこにマウスピースをセットするか、ということが重要だと思っています。

真ん中の実音Cの音(図1)を吹いている時に、マウスピースのリムが下の歯のどこに当たっているかを確認してみてください。もちろん個人差がありますが、この時にリムが下の歯と歯茎の境目、もしくはそのちょっと上位に当たっているのが標準だと思います(図2)。良くないのは、下の歯の上の方に当たっている場合。これは、高い音か低い音のどちらか、または両方に問題がある場合が多い。上下の歯の間隔は広くても狭くても音は出ると思います。しかし間隔を広くして上の唇を多く使おうとすれば、下の歯の上側に当てざるを得ません。
図1   図2
図1   図2

皆さんも、自分が、今日は調子良いな!と思える日があるはずです!!(いつもそう願いたいですね)。

たぶんそんなときは高い音が普段より楽に鳴るのではないですか?音も軽やかに鳴りませんか?下がバリバリ鳴って今日は調子がええワイ!という玄人さんはさておいて、普通の人は、やっぱり中高音が意のままに吹けて調子がいいと感じると思うのです。もちろん両方吹ける方が良いに決まってますよ。

でも僕は、上の音がちゃんと吹ける吹き方を基本に低音を鳴らさないといけないと思うのです。アマチュアの方を見ていると、そこそこ吹けるのだけど、オケやブラスで低音を(無理に)鳴らさなければいけない為に、上の音域を犠牲にして吹いている人が意外に多いのですよ。それは言い換えると下を出し易くする為にアンブシュアを開いて当てている、とも言えます。本来の上が楽に吹ける吹き方というのは、誰でも!楽に!いつでも!(吉野家みたいですな。早く牛丼が復活して欲しいのですが)ハイFが出る吹き方です。

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上がちゃんと吹ける吹き方でそのまま低音を出そうとすると、低音は普通出にくいはずなのです。そこで、低音域は高音域が出易い当て方を保ったまま何かを工夫して出すということになります。その方法は、また後で説明するとして、先ほどの下の歯の上側にマウスピースのリムを当てるというやり方では、たぶん上を楽に出す為には口の中が広すぎるし、何よりも低音を吹こうとしたときに、もっと歯を下げようとしてマウスピースのリムが下の歯から外れて不安定になってしまうか、それを(歯を下げる事)嫌ってアンブシュアを緩めて吹く、というあまり好ましく無い事になってしまいます。

そこで下の歯の付け根くらいにマウスピースを当てるということが重要になってくる訳ですね。高音域を楽に出すためには歯と歯の間隔は思ったより狭いものです。狭くすると音が窮屈になるじゃないか!と反論が聞こえてきそうですが、それは肝心の振動する唇まで締めてしまうからです。唇を必要以上に締めないでも高い音が出やすいように口の中を狭くするのですから!そして、高音域(例えばハイF、図3)が、今までより楽に出た歯の位置をあまり変えずにその下2オクターブまで吹けるように練習するのです。結果、真ん中のF(図4)は、今までの吹き方よりだいぶ口の中が狭く吹くことになりますね?そこが重要なのです!そうすることにより、上2オクターブ(ハイFからその2オクターブ下のFまで間)の跳躍が非常に楽になるのです。
図3   図4
図3   図4

もちろん人によって歯と唇の位置関係は違うので、下の歯と歯茎の境目にマウスピースのリムを当てたのでは、上唇をたくさん使う位置に当てられない人もいるかもしれませんね。その場合、上唇を多く使うことを優先すべきだと思うのですが、多少、低音域が犠牲になってしまうかもしれません。反対に、唇に2:1の割合で当てると、下の歯と歯茎の境目より下の、歯茎の方に当たってしまう人(私はこのタイプです)は、2:1の割合より3:1とか4:1の割合になってしまうかもしれません。でも大事なのは、気持ちよく吹けることですね!

この他にもまだまだ上手く吹くためのヒントは当て方だけでもいっぱいありますよ。それも順を追って説明することにします。ただ、全てが関連しているので、一つだけ実行してもうまくいかないかも知れませんね。

また、実行してみても楽に吹けない人はいっぱいいるでしょう。それは先ほども言ったように、顔かたちは人それぞれですから。ある人には当てはまっても、ある人には全く逆だったということはあります。最終的には音で判断するしかないでしょう。

長時間の繰り返しでうまくなる練習も必要です!でも、どう唇を使うかを考えるだけでうまくなることもあります!みなさんも、是非、楽に美しく吹けるポイントを見つけてくださいね。参考までに、自分のアンブシュアの写真も載せておきましょう。

それでは良いお年を!See you next year!!


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