アレキサンダーファン
2017年02月掲載
プロフィール
向 なつき(むかい・なつき) 向 なつき
(むかい・なつき)

石川県内灘町出身。金沢桜丘高校を卒業。愛知県立芸術大学音楽学部卒業。東京藝術大学別科を修了。愛知県立芸術大学音楽学部第44回定期演奏会に成績優秀者として出演。フレッシュコンサート2012inKANAZAWAにてグランプリを受賞。2014年音大卒業生による第14回ヤマハ管楽器新人演奏会に出演。2014年JHQサマーキャンプソロコンテストにて1位受賞。2015年HIS Premier Solist Competitionにて1位受賞。これまでに下村健治、大野良雄、竹村淳司、日高剛、野々口義典、西條貴人、伴野涼介の各氏に師事。現在、愛知室内オーケストラ ホルン奏者。Cor Ensemble VENUSメンバー。


使用楽器:
アレキサンダー 103MBL
使用マウスピース:
ティルツ シュミット105

第52回 プレーヤーズ
向 なつき インタビュー

国内外のホルンプレーヤーにスポットを当て、インタビューや対談を掲載するコーナー。
ホルンについてはもちろん、趣味や休日の過ごし方など、
普段知ることの無いプレーヤーの私生活についてもお伝えします。



─ホルンを始めたのは?

 中学校の吹奏楽部で始めました。小学2年生からピアノを習っていたのですが、やはり音を出すのが好きだったんですね。部活が忙しくてピアノは続かなくなってしまいましたが。


─希望は最初からホルンだったんですか?

 はい。珍しがられます(笑)。体験入部のときに音を出してみて、ホルンが一番よく音が出て「これなら行けるんじゃないか」と思いました。実際に吹いてみたら面白くて、部活をするのが楽しくて学校に行っていました。授業中も楽譜を見たくて仕方がなくて、こっそりと製本したりもしていました。
 中学校の吹奏楽部はコンクールの全国大会を目指していたのですが、私がいたときには北陸大会止まりで、でも卒業してから全国大会に進めました。中学校のときは本当に部活一色でしたね。練習は確かに厳しかったかもしれませんが、部の仲間と和気あいあいと「ああでもない、こうでもない」と意見を交換しながらやっていたので、楽しかったですね。


─高校も吹奏楽部を基準に選んだ?

 そうですね。吹奏楽も盛んで、勉強もできる高校に行きたいと思い、内申点をがんばって部活推薦で入学しました。高校でも全国大会を目指していたのですが、やはりだめで、ここでも私が卒業してから全国に行ったんですよ。


─高校生のときから、レッスンは受けていたわけですね。

 音大に行くと決めた頃に、ワイマールへの留学から帰国した下村健治先生に付いてレッスンを受けるようになったのですが、偶然実家が近所だったのもあってレッスンへは通いやすく、部活が忙しかったにも関わらず定期的にレッスンを受けることができました。


向 なつき

─愛知県立芸術大学を選んだのは?
 下村先生の出身大学ということで選びました。大学では3年生まで竹村淳司先生に習いました。竹村先生は私が入学する半年前から准教授になられたのですが、実際にプレーヤーとして第一線で活躍されていた方にじっくりと教えを受けることができたので、本当に良い時間だったと思います。レッスンでは、曲を音楽的に見てもらうような内容が中心でした。私自身、ホルン吹きではあるけれど、まず音楽家でなければならないと思うので、そういうところを教えていただけてよかったと思います。
 4年生のときには名古屋フィルの野々口義典先生に習いました。野々口先生には体の使い方など、今まで考えたことがなかったような視点で教えていただくことが多かったです。



同じ方向に行くことが大事ですが、自分の根本を変えてしまわない方がいい

─愛知県芸を卒業されてから、東京藝大の別科で学ばれたのですね。

 日本で音楽活動をしたり、オーケストラに入ったりするためにはどうしようかなと考えたときに、やはり東京に行くことが憧れだったんです。もちろん東京藝大も憧れでしたし、先生も充実していて学生もみんな上手だということは知っていたので、そういう環境に身を置きたくて、別科を受けました。


─憧れの東京藝大はいかがでしたか。

 まず、周りの人たちがみんな上手なことが印象的でした。あと学校でやっている演奏会が多い上に、都内のオーケストラなど外に出る機会もたくさんあって、急に忙しくなりました。ありがたいことにエキストラのお話も東京に来た当初からいただけて、行くと毎回自分の足りないことを感じるし、「こうしたいな」ということもたくさん出てきました。目まぐるしい毎日でしたけれど、すごく刺激的でしたね。特に別科というのは、いろいろな授業に出ることもできるし実際出ていたのですが、単位として数えられるのはレッスンだけなので、時間がかなり自由になったことも大きかったです。ほぼフリーランスのような感じで2年間過ごしていました。


─エキストラは、どんなポジションが多いのですか。

 3番とか1番のアシスタントなどが多いですね。やはりものすごく緊張しますし、今でも慣れるということはありません。


向 なつき

─そういうポジションで1番の人と合わせていくとき、どんなふうに考えていますか。
 音色まで似せようとしていた時期があったのですが、基本的に持っている色って違うじゃないですか。発音の仕方も違いますし。それを「全部似せなきゃ」と思ったらうまく行かなくて。「もうちょっと自分が吹きたいようにやってみよう」とか、「ここはこうだと思う」と考えて吹いているときの方がうまく行くように感じました。もちろんセクションとしてまとまるために音量とか音色とかアタックの感じなどは合わせなければならないし、同じ方向に行くことが大事だと思いますが、自分の根本を変えてしまわない方がいいということですね。ただアレキサンダーの103を使っている人が多いので、その場合はやはりニュアンスが合いやすいと思います。同じように吹き込んだときに同じように鳴らしやすいというのでしょうか。


向 なつき

─向さんは、上吹きですよね。
 はい。低い音の奏法がよくわからないことがあって、このサイトの阿部雅人先生の記事「達人の息吹」もずいぶん参考にさせていただきました。「下がもっと出ればもっと楽しいのにな」と思うことは今でもあって、ホルンアンサンブルなどをしていても下のパートへの憧れはかなりあるんですよ(笑)。上のパートを吹くことが多くて、もちろんそれはそれで好きなのですが、一番下の声部を聴いていつも「格好いいなあ」と思っています。大学時代から上を吹くことが多くて、「下がいいなあ」と言っても「やめておいた方がいいよ」と言ってなかなか吹かせてもらえなかった(笑)。
 オーケストラでも、ベートーヴェンなどの古典で出てくる「ホルン五度」の下のパートの動きが本当に格好良くて。でもやはり下吹きの人のようには吹けないんですね。



まず「どう吹きたいか」ということを忘れないようにしたい

─愛知室内オーケストラはいつから?

 愛知県立芸術大学の4年生のときから在籍しています。


─オーケストラのプロフィールを見ると、団員が運営を兼ねているとありますね。

 まだできて新しいオーケストラなのではじめは団員が企画やステージの組み立て、事務作業などを兼任していたのですが、事務やステージマネージャー、常任指揮者をお迎えするなど、オーケストラという組織として着々と成長してきています。


─活動の頻度はどのくらいあるんですか。

 オフシーズンは月に1回あるかないかくらいですが、シーズン中は頻繁に行ったり来たりしています。名古屋では金鯱(きんしゃち)ブラスクインテットという金管五重奏も組んでいて、私は今東京に住んでいるので本当に行ったり来たりで、ときどき自分は今どこに向かっているのかわからなくなることもあるくらいです(笑)。


─愛知室内オーケストラは楽団員が30名弱という小さな編成ですが、やはり古典が中心ですか。

 そうですね。ただ、2015年から常任指揮者になっている新田ユリさんが北欧が得意な方なので、シベリウスやニールセン、それからデンマークの作曲家であるゲーゼなどの作品の中から、愛知室内でできる編成の曲をよく取り上げています。有名ではありませんが、良い曲がたくさんありますよ。
 さらに、訪問演奏などではフルオーケストラの曲を小さな編成にアレンジして演奏することもあります。アレンジというよりも、スコアを見ながら音を割り振るようなこともあって、例えば普通ならホルン4本の曲を2本で吹いたり、2ndホルンもいないときにはその音をトロンボーンにお願いしたりとか。あるときはベートーヴェンの《第九》の第4楽章をホルン2人で吹いたのですが、泣きそうなほど大変でした(笑)。


─教えることもされています?

 はい。個人レッスンをしたり、大学オケのホルンを指導に行ったりしています。


向 なつき

─どんなことを重視していますか。
 そもそも、「どんなことをしたいか」があっての奏法だと思うんです。どうしても、アンブシュアがどうとか、息の使い方がどうとか、姿勢が、とかばかり考えてしまうのですが−−もちろんそれらも大事なことですが、まず「どう吹きたいか」ということを忘れないようにしたいと思っています。「ここはどんな色だろう」「どんな匂いがすると思う?」とか、「このハーモニーの中のこの音はどんな気持ちだろう」とか尋ねてみると、演奏には表れていなくても考えている人は実は多いんです。そういうことを引き出して、それを実現するための技術を伝えられれば、という気持ちでやっています。そして自分自身も同じように練習したいと思ってはいます。



アレキサンダーの音が自分のイメージにもっとも近い

─さて、アレキサンダーはいつからお使いですか。

 大学に入ってすぐに103を購入しました。それまでは、高校に入ったときに買ってもらった楽器を吹いていたのですが、レッスンを受けていた下村先生もアレキサンダーだったので憧れがありましたし、シュテファン・ドールのシュトラウスのCDも擦り切れるほど聴いていたので、あのキラキラした音を自分でも出したいと思っていました。「公立の音大に現役で入れたら買ってあげる」という約束を親としていたので、めでたく103を買うことができました。その同じ楽器をずっと使っています。
 他の楽器もそれぞれ良さがあると思うのですが、やはりアレキサンダーの音が自分のイメージにもっとも近く、周りとも合いやすいように思います。


向 なつき

─実際に使っていて、どんなところに魅力を感じますか。
 もう、可愛いです! 特に持ち手からベルにかけてのラインが可愛いと思うんです。ここの曲線が他の楽器と違っていて、すごく美しい。つい撫でてしまうこともありますよ(笑)。音の面では、基本的には明るい音が好きなので、そのイメージに一番近い楽器なのかなと思います。


─マウスピースはどんなものを?

 ティルツのシュミット105です。


─内径18mmですよね。上吹きの人にしては大きいですね。

 一時期、コンパクトな音に憧れて16mm台まで小さくしたことがあるのですが、フォルテでの鳴りが良くなくて、ちょっと詰まったような音になってしまいました。唇が薄い方ではないので、唇が無理なく収まるサイズがいいのかなと思い、今は少しずつ大きくしている段階です。


─カップが大きいと高い音が出にくくなるようなことはありませんか。

 自分に合っていれば大丈夫だと思います。あまり深いものだと高い音を吹くときに怖いこともありますが。


─曲によって変えたりしません?

 例えば、ちょっと吹きすぎた翌日は唇が腫れぼったくて分厚くなっている感覚で、マウスピースが窮屈に感じるじゃないですか。逆に前の日にあまり吹かなかったりオフにした翌日はマウスピースを大きく感じる。だったら、ちょっとずつ大きさの違うマウスピースを使い分けたらいいじゃないかと思った時期もあったのですが、わけがわからなくなりそうでやめました(笑)。もともと迷ってしまう性格なんですよ。だから、いろいろなことを考えてはいるのですが「なるべくシンプル」を目指しています。


向 なつき

─これからやってみたいことはありますか。
 オーケストラで吹いていくことはもちろんですが、愛知室内では木管楽器や弦楽器とのアンサンブルの機会もあるので、そういうところを精力的にやっていきたいと思っています。結局は全部小さなオーケストラなので基本は変わらないわけですから、コンパクトな編成でどんなことができるかがわかった上で、オーケストラで吹くというのがいいのかなと思っています。




「趣味」のコーナー

─愛知室内オーケストラの団員紹介に趣味は「自転車」と「ペットショップに行くこと」と書いてありましたが。

 動物がすごく好きなのですが、今は飼えないので、ペットショップ遊びに行きます。肉球を触らせてくれる子がいて、ホントかわいいんです。あと暇なときには、Facebookやinstagramにある動物の動画をずっと見てます。


─あとはサイクリングに行ったり?

 サイクリングというより交通手段なのですが、藝大に行っていたときには寮があった亀有から学校がある上野まで10kmくらいを、自転車で通学していました。川沿いの道を走るのが気持ち良くて。ただ、日焼けはしました。びっくりするような色になって(笑)。
 でも、引っ越してからは自転車であまり遠出はしていませんね。近くの公園に行ってぼーっとしているとか、ちょっと離れたところまで行って和菓子を買って帰るとか。一度それで仕事に行こうかとも思ったのですが、万が一事故ったときのことを考えて、やめました。


─どんな自転車?

 ルイガノの水色のクロスバイクです。


─けっこう本格的ですね。

 本格的にやろうと思って買ったんですが、そこまで本格的というわけではないです。もっとタイヤの細いロードバイクを見ると「いいなあ」と思いますが……。


─休みの日にはどんなことをしていますか?

 家でのんびりしていることが多いですね。本を読んだり、たまった家事をしたり部屋の掃除をしたり、次の日からの曲の練習をしたり。


─今後挑戦してみたいと思っていることとかありますか?

 登山をしてみたいですね。周りの自然が豊かな愛知県芸で4年間を過ごしたことが影響しているのかもしれませんが、都内にいるとすごく自然が恋しくなるんです。今はなかなか行けずにいますけれど。



向 なつき


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