アレキサンダーファン
2022年04月掲載
第78回 アレキファン的「ホルンの“ホ”」
103ラバーによる、103ユーザーのためのイベント We Love 103

アレキサンダー103を愛する103人が集結!!

 2021年11月23日、東京都北区の北とぴあ・さくらホールに、アレキサンダー103を愛する103人が集まった――
 何かの宣伝文句、もしくは冗談のように思われるかもしれないが、事実である。

 このイベント「We L♡ve 103」を主催したのは、アマチュアホルン奏者で103をこよなく愛する山路樹里さん。きっかけは2020年の10月頃、「こんなイベントがあったらいいな」とツイッターに投稿したこと。
「コロナ禍で次々とイベントが中止になっていって、リモートでアンサンブルをしても物足りなくて、本当に大勢で集まってアンサンブルしたいなと思ったのが最初です」と山路さんは言う。「それに、自分でも使っている103という楽器が大好きだったので、せっかくなら103ユーザーが集まるリアルなイベントをいつか企画してみたいと、最初はただの夢でした。でもツイッターにそんなことを書いたら賛同してくれた人が多く、遠方からも『参加したい』と言ってくれる人がいました。実際、今日も北海道や九州からいらっしゃっている方がいます。そうやってみなさんに背中を押してもらって、大ホールの抽選に参加したら会場が取れてしまって(笑)。そういう流れで開催が決まりました」



  「『103ユーザーではないけれど103が好き』とか『いつかは103を吹きたい』という方もたくさんいらっしゃいますので、イベント参加者は103ユーザーだけに限っていません。みなさんに楽しんでいただけるイベントにしたいと思いました」と山路さんが言うように、他のメーカーの楽器を持って参加し、アレキサンダーの楽器の試奏を楽しんでいた人もいた。
 山路さんは知人を通してアレキサンダーの総輸入元であるヤマハミュージックジャパンの協賛を取り付けた結果、色とりどりのMBのケースとともに、試奏用の楽器がステージに用意されることになり、フィリップ・アレキサンダー社長のスペシャルコメントももらうことができたのだった(その動画は、会場で配布されたQRコードによって見ることができた)。


 

 


 極めつけは、facebookに「We love 103」というグループを立ち上げ、『103×103写真集』と題して自分の103を紹介する投稿を募り、当日はそれを立派な小冊子にまとめて参加者に配布したこと(もちろんfacebookでも見られる)。そこには日本中のアマチュア奏者の楽器自慢に交じって当日ゲスト出演したホルン五重奏団Horsh(ホルッシュ)のメンバーをはじめ、東京都交響楽団の岸上穣氏、ベルリン・フィルのサラ・ウィリス氏などの名前もあった。


 

 


ステージでの試奏タイム、ホルッシュのミニコンサート

  当日は13時受付開始から14時半のホルッシュ演奏まで、ホール内で自由に音を出したり、ステージ上で各アレキサンダーの楽器を試奏することができた。もちろんその後に控える全体合奏のための音出しタイムでもあったが、コロナ禍で演奏会もままならない時期だけに、参加者は久々の大ホールの響きを堪能しているように思えた。旧交を温めたり、互いの楽器について話をする姿も見られた。
 ステージ上では憧れの103を初体験したり、最新の103と自分の楽器の吹き心地を比べたり、アレキサンダーの別のモデルを吹いたりと、用意された楽器を思い思いに試奏。かと思うと突然、ベートーヴェン《英雄》交響曲第3楽章の例のホルントリオが素晴らしく鳴り響く。見るとホルッシュのメンバーによるサプライズであり、会場内は拍手喝采、という出来事もあった。


 ステージのリセッティング後、開会のあいさつに続いて本日のゲスト、ホルッシュの演奏となった。ホルッシュは小田原瑞輝、庄司雄大、鈴木優、信末碩才、柳谷信の5人による新進気鋭のホルンアンサンブルであり、全員が103ユーザーでもある。
 本番前にメンバーにコメントをいただいた。


庄司雄大

「僕自身103という楽器が大好きなので、こういうイベントがあることはいちホルン好きとしても大変嬉しいですし、そこに、全員がアレキサンダー103を使っているホルッシュという団体で呼んでいただけたのは本当に光栄なことだと思って、今日は楽しく演奏させていただきます」

鈴木優

「私の所属している東京都交響楽団のホルンセクションも全員がアレキサンダーを使っているので、とても耳馴染みのある響きではあるのですが、こうしてアマチュアの方まで幅広い年齢層、いろいろな職業の方が集まってアレキサンダー103についてのことを考える時間というのは、今までありそうでなかったことだと思います。このイベントに私たちを呼んでいただいたことに感謝しています」

小田原瑞輝

「会場に来てみて、すごくたくさんの方がいらっしゃっていることに改めて驚いています。103という楽器の人気を再確認できますね。僕自身も103は大好きですが、そういう人が一堂に会してイベントができるというのは素晴らしいことですし、そんなイベントで演奏できるというのは嬉しいことです」

柳谷信

「僕は103という楽器を買ってから、“103”という数字が自分の中で特別なものになりました。マンションの部屋番号が103だったり、泊まったホテルの部屋が103だったりすると何か嬉しくなってしまうんですね(笑)。そんな楽器を介して、アマチュアとプロが垣根なく同じ立場で音楽を楽しむことができることは素晴らしいことなので、このイベントを参加者の皆さんと楽しめたらいいなと思っています」

信末碩才

「アレキサンダーの103という1つのモデルだけで、これだけの人が集まるというのは、もはや「魔力」ですよね(笑)。ホルン吹きが集まるイベントなら割とありますが、このイベントはそういう意味でも特別で、そこに参加させていただいて光栄ですし、精一杯楽しんでいただけるような演奏ができたらなと思っています」


 


 さて、そんなホルッシュの演奏は、1曲目のグリーク《ホルベルク組曲》より〈前奏曲〉を端正なアンサンブルで聴かせた後、ターナー《テトゥアンのカスバ》を演奏。客席の103ファンたちを引き込んだ。トゥッティでは103ならではのブリリアントな響きでホールを満たし、ハーモニーはひとつに溶け合いながらも各パートの動きが明確に見て取れる。タイミング、音程、音量、音色、そしてフレージングなど、どれをとっても乱れのない、見事なアンサンブルで魅了した。
 メインの《フェスティバルバリエーション》は吹奏楽でも難曲(それもホルンに厳しい!)だが、例え難しいパッセージであっても軽やかに聴かせるなど、テクニックに全く不安を抱かせないため、純粋にこの名曲にのめり込むことができた。中間部では長いフレーズを一筆書きで歌うように演奏し、特にそのレガートの美しさは、103のなめらかな音色とあいまって、しびれるほどだった。そしてアンコールは、《アメージング・グレイス》をたっぷりと歌い上げた。
 ミニコンサートではあったが、ホルッシュと103という楽器の魅力が同じ線上にあることが相乗効果を生む、素晴らしい演奏を堪能できたのだった。


 


ホールいっぱいに103サウンドを響かせた全体合奏

 休憩をはさんで、このイベントの目玉でもある、オール103(+α)による全体合奏となった。指揮はホルッシュの小田原さん。1曲目は全体合奏の定番、ベートーヴェンの《自然における神の栄光》。そして2曲目が東日本大震災後に日本を応援するためにフェルヘルストが書いた《A SONG FOR JAPAN》。参加者たちは広い大ホールの客席に散らばり、ステージを背に演奏。どちらも1度のリハーサルの後本番演奏となったが、その間に確実にアンサンブルが構築されたのはさすが。ホール中に103のサウンドが感動的に響きわたり、それに包まれてみな幸せな気持ちで演奏を終えたのだった。これは同じ楽器を愛する人同士の「心のアンサンブル」だったと思う。


 


 


 終演のあいさつで、主催した山路樹里さんは途中涙で声を詰まらせながらこう語った。 「私はこの103を持っているときが、一番自分が輝けるときだと思っています。イベントは1年前から準備してきましたが、その間ずっと幸せでした。私は今、世界中で一番幸せなホルン吹きです! この楽器がつないでくれた縁を大切にして、これからもホルンを続けて行こうと思います」

「第2回を」という要望はすでに上がっていて、山路さんも実現に向けて前向きだという。「今回やってみて反省点などもあるので、それを生かして、気力があれば1回と言わず何回でもやりたいという気持ちはあります」と話してくれた。


 後日メールをいただき、参加者、実行委員、司会、裏方スタッフ、協賛関係&取材、そしてホルッシュのメンバーを足すと、この会場にいたのは、なんとぴったり103人だったそうだ。本人曰く「あまりにも出来すぎた数字で、奇跡が起きたなと思っています」だそうだが、これはもう、「103の神様」からのご褒美だったのではないだろうか。


 


参加者の声

 参加者のコメントと、愛器の写真をランダムにご紹介。
(※コメントと写真は一致していません)


「ホルッシュさんの《フェスティバルバリエーション》の中間部では思わず涙が出ましたね。全体合奏は、今までになかったような高揚感にあふれていて、本当に素敵なイベントでした」


「立ち上げの頃からツイッターでこの企画のことを知っていたので、私も103ユーザーということもあり、温かく見守ってきました。イベントが大成功して何よりです。めったにない機会だったので、参加できてとてもよかったです」


「今日の午前中の便で熊本から来ました。とても楽しかったので、遠くから来た甲斐がありました」


「山路さんは大学からの友人なので、今日はスタッフとしてのお手伝いを兼ねて参加しました。こんな大人数で久々に合奏できたのですごく楽しかったです」


「こういうイベントに参加したのは初めてで、とても貴重な場にいられてよかったなと思っています。最後にみんなで合奏したときには、ホルンの響きに包まれて幸せな気持ちになりました」


「山路さんとはFacebookでつながっていて、私はアレキサンダーユーザーではないのですが『構わない』ということだったので参加しました。今後はアレキサンダーを使ってみたいという気持ちもあったので、今日103を試奏したら全然響きが違ってびっくりしました。全体合奏も感動しました。楽団に入っているのですが、コロナ禍でずっと演奏会をできていないということもあって、《A SONG FOR JAPAN》では泣きそうになりましたよ」


「103という楽器を通して集まり、みんなと一緒に吹いて103のサウンドを体験することはものすごくためになったし、全体合奏では感激できるような音を出せたと思います」


 

 

 


 

 


 

 


 

 

 


文:アレキサンダーファン編集部 今泉晃一


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