アレキサンダーファン
2021年04月掲載
第77回 アレキファン的「ホルンの“ホ”」
Quartet Hornets 2nd Concert

MCは、プログラムノートも書いた熊井氏が担当

 カルテット・ホーネッツは山岸リオ、日橋辰朗(以上、読売日本交響楽団)、豊田実加、熊井優(以上、神奈川フィルハーモニー管弦楽団)から成るホルン四重奏団で、2016年に結成され、翌2017年に第1回の演奏会を行なった。「ホルンの音がもっとも魅力的に響く四重奏をすることで、ホルンのサウンドをよりよくしていきたい」と山岸氏が日橋氏と話し、神奈川フィルの2人がそれに賛同した。2つのオーケストラのメンバーになったのはあくまで結果で、「音や音楽に対する価値観を共有できるメンバー」を集めたのだそうだ。
 楽器も全員がアレキサンダー103を使用。団体名はホルンと「人と人とのつながり」を意味するネットワークを合わせたもので、スズメバチとは関係がない。そんなホーネッツが2021年2月26日、新大久保のスペースDoにて、5年ぶりとなる第2回演奏会を開催した。
 メンバーが「こんな難しいアレンジに挑戦!」みたいなところには行きたくないと言い、「音を出してみて、ホルンとして一番良い音のする曲を選んだ」というプログラムは、基本的にホルン4本のために書かれた曲ばかりとなった。しかも、そのほとんどが20世紀に作曲されたものであり、すでにホルン四重奏のスタンダードと言ってもいい曲も多く集められている。



音というより、気持ちがそろっている

冒頭、ウィギンズ《5つのミニアチュア》を立奏で
写真左から熊井(4th)/山岸(3rd)/豊田(2nd)/日橋(1st)

 1曲目はウィギンズの《5つのミニアチュア》。曲調の異なる短い5つの楽章によるものだが、それぞれのキャラクターを明確にしつつも、常にプレーヤー4人が歩みをそろえて演奏していく様がよくわかる。各フレーズのパートごとのつなぎがものすごくスムーズであり、誰かが飛び出るようなことがなく(それがメロディであっても)、常にコミュニケーションを取りながら同じ方向を向いて歩んでいくかのように感じた。
 2曲目はチェレプニン《6つの小品》より〈ノクターン〉〈狩り〉〈軍楽隊のダンス〉。演奏される機会の多い曲だが、それゆえに丁寧なアンサンブルがことさら印象に残る。快活な〈狩り〉でも、音楽的な表現として「荒々しさ」はあるものの、音を荒げることは一切なく、終始豊かなハーモニーを奏でた。


ヒダシュ《4本のホルンのための室内音楽》ではボックス配置を取った
左から熊井(4th)/豊田(3rd)/山岸(2nd)/日橋(1st)

 前半の目玉がヒダシュの《4本のホルンのための室内音楽》。複雑でテクニカルだがその裏にある情緒の濃いこの曲を、テクニックの部分に聴き手の意識を向けさせない演奏で、まるで一編の物語のように見せてくれた。冒頭から何かが起こるような予感を、会場内の空気感ごと作り上げた。曲中で1、3番と2、4番による掛け合いが多用されたが、リズムの噛み合わせがバッチリで、なおかつペアが変わるときのスムーズさも見事。1つのフレーズを複数人でつなぐときも同様で、音というより、気持ちがそろっているように感じられた。こういうところを緻密にやりたかったから、この曲ではボックス配置を取ったのだろう。また、響きがいたずらに拡散せず、ステージ上で溶け合ったままの状態が客席に届く感じもよかった。終楽章の変奏曲は、晴れやかなテーマが様々に変容していく、各々変奏の色合いや感情の変化を鮮やかに見せてくれて、全曲を通して非常に聴き応えがあった。




「技巧的」と感じさせず、軽やかに歌いつなげていった

J.シュトラウス(マーティネット編):歌劇《こうもり》フェイバリッツ
写真左から山岸(4th)/日橋(3rd)/熊井(2nd)/豊田(1st)

 後半はJ.シュトラウス(マーティネット編曲)の歌劇《こうもり》によるセレクションから。アリアの歌心と、ワルツのうきうきとさせるような感じが聴き手を酔わせる。続くプレトリウス(コッハー編曲)の《4つの小品(バロック組曲)》は1992年にザイフェルト率いるベルリン・フィル・ホルンカルテットが東京公演で演奏してお馴染みになった曲。ホーネッツの4人はこれも響きが密で、メンバーの関係性の良さが表れているような気がする。聴いていて思わず笑顔になれるような演奏だった。
 フランスのホルン奏者であったバルボトゥーのホルン四重奏曲第1番は、最初は穏やかでどこか物憂げで、感情の起伏が決して大きくない曲だが、そこに表情の変化を積極的に付けていく。中間部の狩りの音楽も荒々しさより、娯楽としての楽しい狩りの様子が表現されていた。


ラスト、ターナーの《ホルン四重奏曲第1番》は再びボックス配置で
左から山岸(4th)/豊田(3rd)/熊井(2nd)/日橋(1st)

 ラストはターナーのホルン四重奏曲第1番。今やホルンカルテットの主要レパートリーのひとつと言っていいだろう。冒頭のメロディが終わると、速い三連符で4人がパッセージをつないでいく難関がやってくるが、これまで通りのスムーズなやりとりで音楽の流れを途切れさせない。この曲は4番の見せ場も多く、山岸の華のある低音が聴き手の耳を捉える。全体に華やかでエモーショナルな曲だが、同時にホルンの機能性を十二分に使った技巧的な部分も多い。それを「技巧的」と感じさせず、軽やかに歌いつなげていった。
 音色やハーモニーはとても豊かなホルンのそれだが、ある意味においては「ホルン」という縛りを感じさせない音楽。これはホーネッツの演奏会全体を通して感じたことだった。



文:アレキサンダーファン編集部 今泉晃一


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