アレキサンダーファン
2015年7月掲載
第63回 アレキファン的「ホルンの“ホ”」
ジャパン・ホルン・クインテット コンサート


 山岸博、久永重明(読響)、西條貴人(都響)、上間義之(東響)という都内のオーケストラの「上吹き」ホルン奏者4人で構成されていたJHQ(ジャパン・ホルン・カルテット)に、強力な下吹きの勝俣泰(N響)が加わって5人となったジャパン・ホルン・クインテット(略称は変わらずJHQ)が、2015年4月25日、東京の上野学園石橋メモリアルホールにて演奏会を開催。メンバー個々の魅力と、結成以来15年という歳月のもたらす熟成した響きを聴かせてくれた。




ハーモニーの魅力を存分に味わう

 プログラムは、オリジナルのホルンアンサンブル曲と、クラシックの名曲のアレンジから成る。
 まずはモーツァルトの《ディヴェルティメントK.138》。元は弦楽合奏の曲だが、JHQのホルン5本の音色に、1発目から魅了されてしまう。モーツァルトらしいしなやかで軽やかなアレグロ。緩徐楽章はたっぷりとした響きを持つ新しい石橋メモリアルホールと相まって、幻想的なほど音に包まれる感覚があった。上を吹く4人は全員アレキサンダー103ということもあり、ハーモニーの魅力を存分に味わうことができた。
 続いてはJHQが毎回のように取り上げているお得意のターナー。しかも今回は「定番」とも言えるホルン四重奏曲第1番を演奏した。テクニカルな要素も多い曲だが、そこはきっちり消化して、メロディの美しさが際立つ演奏だった。第1楽章、第3楽章など低音に厳しい音型がかなり出て来るが、4番を吹く勝俣氏は決してもたれることがなく、決めるべきところではバリバリと鳴らす。全体に、音楽的に攻めている感があり、そのせめぎあいが良い意味の緊張を生んで面白さにつながっていた。第2楽章の中間部は指定では口笛でメロディを吹くことになっているが、JHQでは1stの西條氏のホルンと2ndの山岸氏の口笛のユニゾンで演奏し、とても美しかった。
 イギリスの作曲家ウィギンスの《Time For Five》は特徴的な5曲から成り、それぞれのキャラクターの対比が楽しい。1曲目〈STEAM TRAIN BLUES〉は蒸気機関車がゴトゴトと音を立てて走る感じがジャジーな曲調で描かれる。〈NORDIC MELODY〉は打って変わってしっとりとした曲だが、JHQのサウンドの変化、雰囲気の切り替えが見事。3拍子の常動曲〈MOTO PERPETUO〉は流れるメロディの裏でずっと細かく動いているのだが、そこのかみ合いが面白い。〈CHILLING OUT〉では、1stを吹く上間氏の雰囲気のある歌い回しが見事。〈JVE FOR FIVE〉も、5拍子の印象的なメロディを歌心豊かに演奏した。さすが大野雄太氏とホルンによる紅白歌合戦を開催しているだけのことはある(?)。


 ブルックナー:交響曲第7番から第2楽章は、この演奏会のひとつの目玉だろう。ワーグナーテューバ5本による太く、重く、輪郭のはっきりした独特のサウンドと厚みのあるハーモニーは、石橋メモリアルホールの響きとも合っていて絶品だった。使用した楽器は2本がアレキサンダーで、残り3本がレヒナー。




高揚感と充実した聴後感を残してくれたJHQに喝采

 ブラームス:交響曲第2番より第1楽章は、もともとホルンの聴きどころ満載であるが、その“美味しい”部分を中心に大胆につないだアレンジ。山岸氏による終盤のホルンソロが聴けたのも嬉しかったが、同じ人のホルンで弦楽器のメロディも聴けて二度美味しい。伸びやかで朗々として、大きな音楽を作るなあと改めて感銘を受けた。
 キッペのホルン・トリオは三重奏ながら音が幾重にも折り重なるような重厚さを持っており、それにふさわしいスケールの大きな演奏も聴き応え十分。トップを吹いた久永氏が中心となって、同族楽器3本という小さな編成ながら多彩な表現で聴き手をまったく飽きさせなかった。


 ラストはバッハの《トッカータとフーガ ニ短調》。《小フーガ ト短調》ならともかく、「この曲をホルン5本でやるか!?」というのが最初の感想。背後には「本物の」パイプオルガンも鎮座している。曲中にはオルガン奏者による装飾的な部分も多いが、そういうところを含むルバートなど、1人の奏者による演奏のような見事なアンサンブルを聴かせた。同一楽器としては驚異的な音域の広さを誇るホルンを極限まで使いこなしている。特にフーガの主題は、コープラッシュを思わせるような離れた音程を往復しつつメロディを浮かび上がらせなければならない、ホルンにとっては過酷なものだ。そういう個々の技術力も必要であり、その上でアンサンブル力、音楽性の統一といった難題をクリアして、高揚感と充実した聴後感を残してくれたJHQに喝采を叫びたい。
 アンコールにはメンデルスゾーンの《真夏の夜の夢》から〈ノクターン〉をしっとりと、そして《星条旗よ永遠なれ》をノリノリで演奏してコンサートを締めくくった。




文/撮影:アレキサンダーファン編集部 今泉晃一


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