アレキサンダーファン
2011年01月掲載
第45回 アレキファン的「ホルンの“ホ”」
ジャパン・ホルン・カルテット 特別演奏会

アレキサンダーファンの皆様、2011年もよろしくお願いいたします。
と言いつつ、話題は昨年秋の演奏会に遡ります。


 11月4日、東京のトッパンホールにて、ジャパン・ホルン・カルテットの特別演奏会が行なわれた。しかも、リハーサルの合間にメンバーにお話をうかがうと、どうやら“ジャパン・ホルン・カルテット”としては最後の演奏会になるらしい。
 というショッキングな報告は嘘ではないが、この話には続きがあって、ジャパン・ホルン・カルテット(以下、JHQ)が解散するということではないのでご安心を。その理由は最後に。



まず《コンツェルトシュトゥック》ありき

 JHQは読響の山岸博氏、同じく読響の久永重明氏、都響の西條貴人氏、東響の上間善之氏によるカルテットで、「全員がオーケストラの上吹き」というのが特徴だ。ちなみに、使用楽器は4人ともアレキサンダー103である。普段上を吹いている人々がアンサンブルの4番を吹く姿を見られるのもJHQならではだが、今回は下吹きのスペシャリスト、N響の勝俣泰氏が助っ人として登場し、豊かな低音を聴かせた。


ジャパン・ホルン・カルテット

 さて、今回のプログラムの目玉はなんといってもシューマンの《コンツェルトシュトゥック》。「今回の演奏会は、まず『山岸さんとコンツェルトシュトゥックを演る』ということが最初にあったので、嫌がる本人を有無を言わさずにやっていただき、そこから作っていきました」(久永氏)、「今回はコンツェルトシュトゥックに尽きます」(西條氏)というように、まさにこの曲ありきで演奏会が構成されていた。


 「メインがコンツェルトシュトゥックということで負担が大きいので、その前にデュエットをプログラミングしました。カルテットの演奏会ですが、こういう編成を入れることでバラエティに富ませることができたので、良かったと思います」と上間氏が言うように、おかげで五重奏あり、ピアノ伴奏のデュエットありと、新鮮なプログラミングとなった。
 ターナーの五重奏曲《テトゥアンのカスバ》のために呼ばれたという勝俣氏は「以前、故・一色さんが下吹きをしていらっしゃった頃から、僕はファンとして聴いていましたし、常にJHQには興味を持ち続けていましたので、今回こういう形で参加させていただいたのは大きな喜びです」と話す。他のメンバーからも「今回、勝俣さんが入ってくれて本物の下を聴かせてくれるので、吹いている方としても楽しかったです」(山岸氏)というコメントが。「おかげさまで僕が4番を吹くのは、今回が最後になると思います」(西條氏)というのが意味深だが!?



バラエティに富んだ編成と曲目を堪能!

 演奏会はシャイトの《カンツォン・コルネット》で幕を開けた。
リハーサルで響きを確かめながら立ち位置を細かく調整しての立奏であり、響きの良いホールということも相まって、客席はとても美しいサウンドに包まれた。ホルンはホールを含めて楽器であることを実感。ホールの空間に響いたときに一層美しさを増すのが、アレキサンダートーンでもあるのだ。


ジャパン・ホルン・カルテット

 2曲目、バッハの《小品集より》でも、良い意味で力の抜けた美しい音を堪能させてくれた。まるで鍵盤楽器のような正確さと、ホルンによる音色とハーモニー、両方の魅力を感じさせてくれる。全体に抑えめに吹いていたが、1番の久永氏の音の伸びがとても魅力的だったことと、各声部が対等に歌い込んでいくことで曲全体に大きなうねりが感じられたことが印象に残った。
 ターナーの《テトゥアンのカスバ》は、勝俣氏も加わっての5重奏。ターナーらしくテクニックと哀愁あふれるメロディが混在しているが、全体の印象としてテクニカルな面を強調せずしっとりと歌い上げたと感じさせたのは、1人1人のテクニックが素晴らしいからだろう。また、低音スペシャリストの勝俣氏が入ることで、響きがより一層安定感を増した。なお、中間部で山岸氏がスライドホイッスルやカスタネットなどを(嬉しそうに)演奏していたのも、ちょっとレアな光景だった。


ジャパン・ホルン・カルテット
 
ジャパン・ホルン・カルテット

 後半1曲目は、明快なファンファーレから入り、4番ホルンも大活躍する華やかな曲調のトート《キャメロット》。理屈抜きに楽しい。
 続いては遠藤直子氏のピアノが加わり、上間氏、西條氏によるヴィット《2本のホルンのためのコンチェルティーノ》。テンポの緩急の感じ方、フレーズの歌い回しなど、デュオならではのフレキシブルさも大きな魅力。それぞれの音楽性を主張し合ってのやりとりを感じる。それを遠藤氏のピアノがうまく取りなしている、というか包み込むような感じ。これだけできたら、吹いていてさぞ楽しいだろうなあと、見ていて感じる演奏だった。


ジャパン・ホルン・カルテット

 最後はこの演奏会のメイン、シューマンの《コンツェルトシュトゥック》だ。1番を吹く山岸氏はBb/ハイFのデスカント、107Xに持ち替えた。まず、メンバーのこの曲に対する――というより、冒頭のコメントにもあったように、「この曲を山岸氏とともに吹く」ということに対するとても強い思い入れを感じる演奏だった。体力的にもきついが、最後はまさに気合いで乗り切った、力強い演奏だった。


ジャパン・ホルン・カルテット
 
ジャパン・ホルン・カルテット

 アンコール1曲目(シュティーグラーの《フーベルト・ミサ》より)の後、サプライズが! この日は山岸博氏の62回目の誕生日ということで、あらかじめプログラムに挟み込まれていた歌詞を見ながら、客席を巻き込んでの《ハッピーバースデイ》の大合唱。山岸氏は照れくさそうで、嬉しそうな表情だった。


 さて、最初の種明かしを。JHQには実は次回から勝俣泰氏が加入し、“ジャパン・ホルン・クインテット”として活動を始める予定だとか。略称は変わらないが、新たなフェイズを迎える“JHQ”が、また一段と楽しみだ。



JHQ in 大阪ドルチェ楽器
JHQ in 大阪ドルチェ楽器 JHQ in 大阪ドルチェ楽器 JHQ in 大阪ドルチェ楽器
大阪のドルチェ楽器でも11月10日にJHQの公演が行なわれた。このプログラムは、《カンツォン・コルネット》 《バッハ小品集より》で始まり、《コンツェルトシュトゥック》をメインに据えることに変わりはないが、四重奏にウーバーの《組曲》、そして2曲のソロで構成された。グリエールの《コンチェルト》を上間氏が、そしてF.シュトラウスの《ノクターン》を西條氏が聴かせ、満員の聴衆から喝采が湧いた。


文=「アレキサンダーファン」編集部 今泉晃一

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