アレキサンダーファン
2007年01月掲載
ホルンなんでも盤版Bang! 〜ライブラリー〜 「ホルンなんでも盤版Bang!」
ホルン関係のCD・楽譜情報を発信していきます!!


このコーナーでは、ホルンに関するディスクをご紹介いたします。
みんな知っている超定盤、「こんなのあったのか」という珍盤など、ホルンが活躍するものなら何でも。その中から今回はこの2枚です。
ここでご紹介する盤は基本的には筆者のライブラリーですので、当サイトへの、入手方法などに関するお問い合わせはご遠慮くださるよう、お願い申し上げます。


盤版Bang!ライブラリー011

Antonio Rosetti/Concertos for Two Horns
サラ・ウィリス、クラウス・ヴァレンドルフ(ホルン)
ヨハネス・モーズス指揮バイエルン・カンマーフィルハーモニー
Antonio Rosetti/Concertos for Two Horns アントニオ・ロセッティ
1〜3. 2本のホルンのための協奏曲変ホ長調
 Murray C56Q/Kaul deest
4〜6. 2本のホルンのための協奏曲変ホ長調
 Murray C57/Kaul III:53
7〜9. 2本のホルンのための協奏曲ホ長調
 Murray C58/Kaul III:51
10. 2本のフルート、2本のホルンと弦楽のためのノットゥルノ
 Murray B27/Kaul I:58
cpo 999 734-2

▼サラ・ウィリスはベルリン・フィルのホルンセクションの紅一点。「そうとうスゴイ」という噂はあったが、なかなかソロの音色を耳にすることはなかった。AHOCの発足パーティーでベルリン・フィル8人のホルンがアンサンブルを聴かせてくれたときに、そのパワフルな低音に一同度肝を抜かれたものだった。同時に彼女自身のチャーミングさにもすっかりメロメロになってしまった(私だけ?)。
▼そのサラのサウンドが堪能できるCDがついに発売になった。ロセッティの「2本のホルンのための協奏曲」がそれだ。ちなみに相方は同じベルリン・フィルのムードメーカー、クラウス・ヴァレンドルフ。彼がすべて1stを吹く。ホルン2本の曲というのは、コンチェルトに限らず、2ndの方が難しい場合も多く、何より下がしっかりしていないと格好良く聞こえないもの。ということは超格好良いこのCDの演奏は、やっぱりサラが肝ということだ(すみません、ひいき目が過ぎますでしょうか)。
▼CDを聴き始めて約2分後、ソロ(ソリ?)ホルンが入ってひっくり返った。カッコイイ! まず、一人一人のテクニックが完璧。例えば速いパッセージを「こなしてます」ではなく、すべての音が鳴り切っていて張りがある。そしてまた、2人の息がぴったりと合っているのだ。
▼ライナーの写真を見る限りではヴァレンドルフはアレキサンダー1103、サラは103を手にしている。同じアレキサンダーとは言え、どちらかといえばしなやかで輝かしいヴァレンドルフの音色と太く腰のあるサラの音色(使っている楽器とは逆にも感じるが)、それぞれのサウンドをしっかりと持っている。しかしそれを超えたところでのアンサンブルの見事さには感嘆する。サラの(またか!)低音のパワフルさと正確さも聴きものだ。
▼アントニオ・ロセッティはちょうどモーツァルトと同じ時代のボヘミア生まれの作曲家だが、ロセッティのスコアは容赦がない。細かな音符をぴったりと合わせる必要があるし、ホルンらしい伸びやかなフレーズも豊富。音域も広いし、スタミナも要求されるし……。というようなことを、この2人の演奏は全て満たしているだけでなく、CDというメディアを通しても一人一人の"息吹"のようなものがしっかりと伝わってくる。
▼とにかく、ここまでやってくれると爽快だ。というよりも、ホルン関連のCDで、個人的にこれほど衝撃を受けたものは少ない。好き、嫌いに関わらず、とにかく全ての人に聴いてほしいCDだ。
▼最後に収録されている「ノットゥルノ」は世界初録音。特にホルンの聴きどころがあるわけではないが、貴重な音源には違いない。


盤版Bang!ライブラリー012

Horn Concertos
ズデニェク・ティルシャル(ホルン)
ビエロフラーヴェク指揮プラハ交響楽団(1-6)
ノイマン指揮チェコ・フィルハーモニー交響楽団(7-12)
Horn Concertos
1〜3. R.シュトラウス/ホルン協奏曲第1番
4〜6. R.シュトラウス/ホルン協奏曲第2番
7〜9. F.シュトラウス/ホルン協奏曲
10〜12. モーツァルト/ホルン協奏曲第2番 K417
SUPRAPHON SU3892-2

▼2006年に逝去したズデニェク・ティルシャル(1945.4.29−2006.8.18)のR. シュトラウス、F.シュトラウス、モーツァルトのホルン協奏曲が1枚のCDで聴けるのが嬉しい。録音はモーツァルトが76年、R.シュトラウスが79年、F.シュトラウスが85年。ティルシャルはなんと19歳のときからチェコ・フィルの1番を吹いているから、30歳〜40歳ということはすでに円熟期の演奏と言えるのではないだろうか。
▼お馴染みのR.シュトラウスの1番も、最初からティルシャル節全開だ。例のヴィブラートはもちろんのこと、音を出してから息を入れていくような(もちろん実際は違うのだけれど)アタックを感じさせない吹き方など、全く彼独自のものだろう。常に含みを持ったナイーヴな表現は、聴き慣れた曲の印象がまた違って感じるほど。それだけに、例えば終楽章の最後などで吹き切るようなところでの「力」をより感じるのだ。
 ティルシャルのホルンを聴いていると「ホルンは木管だ」とさえ言いたくなる。しかしそのサウンドの持つエモーショナルな力は強く、音色に耳を傾けているうちに、いつしか彼の音楽に引き込まれてしまっていることに気づく。
▼R.シュトラウスの2番は相当な難曲だ。最近の一流奏者なら盤石の安定感でこなしてしまうところだろうが、ティルシャルの演奏はそうではない。いや、テクニック的に不安があるわけではないのだ。常に哀愁を帯びた彼のホルンからは、この曲を演奏する際にも、やはり独特の内気で繊細な印象を受ける。一方で1楽章や3楽章での速いパッセージなど、ホルンにありがちな不自由さを一切感じさせない、鼻歌でも歌うようなスムーズで軽やかな印象がいかにもティルシャルらしい。
▼F.シュトラウスの協奏曲はロマンチシズムあふれる曲だが、ティルシャルの演奏はベストマッチだ。R.シュトラウスでは抑え気味だった感情表現もかなり抑揚に富み、時折オーバーブロウになりそうなほど。オーケストラもお互いに勝手知ったるチェコ・フィルだけに、積極的に絡んで来る様が楽しい。それにしても、自らホルンの名手だったF.シュトラウスのこの曲、聴いた印象よりもはるかにテクニックもスタミナも必要だが、ティルシャルにかかると軽い小品を吹いているように感じてしまう。
▼最後のモーツァルトだが、前回(No.009)ご紹介したティルシャルの「モーツァルト/ホルン協奏曲」のディスクは93年録音だから、10年を隔てた変化を聴き比べてみるのも面白い。10年後の方がよりおおらかでダイナミックになったと感じるのは私だけだろうか。しかも、その腕は衰えるどころか、ますます磨かれているように感じる。すごいホルン吹きだ。

アレキサンダーファン編集部 (今)



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